口の中が乾く入れ歯でのお悩み

「失敗しない入れ歯作り小冊子」

唾液を分泌する腺を「唾液腺」といいます。加齢にともない、唾液腺の細胞が委縮するとともに腺組織の変質が進んで、唾液の分泌量と成分濃度が減っていきます。これは生理現象ですが、あまりに少ないと、体にとって悪い影響が出てきます。唾液には「漿液性唾液」(しょうえきせいだえき)(サラサラした水成分)と、「粘膜性唾液」(ねっとりとした水成分)の二種類ありますが、減少するのはおもに漿液性唾液で、粘膜性唾液はそれほど減少しません。そのために、唾液はねばねばして糸を引くようになります。唾液の消化酵素にプチアリン(唾液アミラーゼ)というものがあり、その含有量も若い人とくらべると、高齢者ではおよそ三十分の一ときわめて少なくなり、口腔内でのでんぷん粉の消化力が低下します。唾液の分泌量が減少すると、口腔内の潤滑油としてのはたらきも低下し、口腔内の粘膜になめらかさがなくなり、食べ物を咀嚼したり、飲み込むことがうまくおこなえなくなります。

入れ歯を使用している人にとって、使用し始めは慣れない刺激によって、唾液の分泌がそれまで以上に多くなりますが、これはまったく心配はありません。慣れるにしたがって、適正な量になっていきます。しかし、口蓋や歯ぐきにかぶせる義歯床が大きすぎる入れ歯は、唾液腺を必要以上にふさいでしまうために、しだいに唾液の分泌量が減ってきて乾燥してしまうので、口腔内の違和感が大きなものになます。また、入れ歯は唾液を介して粘膜に付着しているため、吸着力が悪くなり、入れ歯が外れやすくなります。さらに入れ歯の下にある粘膜は、入れ歯が動くときの摩擦刺激で傷つきやすく、痛みの原因ともなります。また、分泌量が減ると、口腔の浄化作用がおこなわれにくいので、口腔内は不潔になりやすく、口の中の食べかすを原料にして細菌が増殖し、口臭の原因にもなります。

入れ歯は、口腔内が乾燥している場合、入れ歯の工夫によって解決することができます。たとえば、粘膜に接する面をつるつるにしたり、「やわらかい裏打ち材」を使用したりします。さらに入れ歯だけではしのげない場合は、「唾液分泌促進剤」の投与や「人口唾液」や「入れ歯湿潤材」の使用などがあり、乾燥してしまう入れ歯でお悩みでも、快適に使えるように工夫することができるのです。