合わない入れ歯は百害あって一利なし

一ドル札に描かれているジョージ・ワシントンですが、その顔を眺めたことがありますか?一直線の唇の線をはじめとする引き締まった口もとが、いかにも気難しそうな印象を与えています。ワシントンの肖像は、紙幣以外にも切手やコイン、あるいはアメリカ建国史の絵画などに数多く登場していますが、そのいずれもが同様のきびしい表情をしています。実は・・・ワシントンは若いころから虫歯がひどかったのです。ダース単位で海綿の歯ブラシを購入したり、口腔ケアに努力をしていたようですが、22歳の頃から次々と歯を失い、28歳ではすでに入れ歯を必要としていました。独立戦争中も歯痛や入れ歯の不具合に悩まされていたようで、陣中から歯科医にあてた手紙が現在でもイギリスに残されているといわれています。そして、大統領に就任したときには、上顎にはすでに歯がなく、下顎小臼歯がたった1本残っていただけでした。

当時の記録によれば、その時の義歯は蜜ろうをを塗った鉛合金の床に大鹿の牙を削った人口歯を配列したもので、総重量は1.3キロもあったといわれています。しかも当時の義歯には現代のような入れ歯とはほど遠く、吸着はまったく期待できず、上下の義歯を金属のコイル・スプリングで連結して、その力で粘膜に押しつけて固定するものでした。非常に強力なスプリングが付けられていたために、飛び出さないように常にしっかりと顎を噛み締めていなければならなかったのです。入れ歯の不具合は、残った歯や顎粘膜にも大変な負担がかかります。義歯が口におさまらない、強いて力を入れて噛み合わせると、唇が鼻の下に飛び出してしまうばかりでなく、義歯が歯肉に食い込んでひどく痛い。など、しまいには顔の形がかわり、明瞭な発音ができなくなったことで、人前で演説することをあまり好まなかったそうです。

現代の入れ歯は、もちろんワシントンのようなものではありませんが、入れ歯が合わないと感じているならば程度の差はあれ、百害あって一利なしです。ちょっとでも違和感があれば歯科医に相談して入れ歯の調整をしてもらいましょう。