歯列模型の必要性

総入れ歯が合わなくなり作り直すときに、最初に行うのは入れ歯や口腔内の精密な検査です。入れ歯や歯だけでなく口腔内を全身の一部として調べます。ですので、入れ歯を作り直すまでに、ある程度の時間がかかります。精密な検査が終わり、新しく作り直すしかないという治療方法が決まったら、入れ歯患者さまの歯型をとって歯列模型を作ります。総入れ歯を作りたいと希望する患者さんには歯が一本もありませんので、歯茎だけの模型が出来上がります。

その模型上に歯列を再現していくのですが、まずは「歯が全てあったときはどんな状態だったのか」ということです。もし40歳まで永久歯がそろっていたのなら、その時の状態をまず考えます。しかし、その歯列を再現できたとしても、それだけでは不十分です。なぜなら、歯は使っていくうちに磨り減るなどして変化するからです。歯だけでなく、歯槽骨や顎関節も磨り減ります。今の年齢の入れ歯患者さんに合う入れ歯を作るときには「変化した部分」を考慮しなくてはなりません。ですから、歯がすべて生えているときに歯列模型を作っておくとよいのです。歯列模型はきわめて重要なデータです。若いときの模型があれば、その噛み合わせから「変化した部分」を引けばいいのですから、元あった歯列の形に近い総入れ歯が作れます。

歯列模型は、どこの歯科医院でも作れます。ただし、「将来のために歯列模型を作る」という項目は健康保険にはないので、自費になります。費用は数千円程度から一万円で作ることができます。さらに、その際に口腔内の写真も撮っておくと歯の治療全般に役に立ちます。

しかし、歯列模型がない。という入れ歯患者さんがほとんどです。そのときは、どうやって総入れ歯を作り直すのでしょうか。最初に行うのは「模型の読み込み」という作業です。歯が一本もない歯列模型に、中心線を設定するのです。総入れ歯の場合、上下に十四本の義歯を並べることになります。その際に、中心線から左右対称に七本ずつ並べていきます。義歯が左右対称に並んでいないと、歪な入れ歯ができあがってしまうので、中心線の設定はきわめて重要です。しかし、顎は多少変形するのでもっとも変化の少ないところから探します。また上顎の場合「口蓋正中縫合線」という骨の合わせ目に従います。とはいえ、歯列模型を見ただけでは「骨の合わせ目」がどこなのかわかりません。そこを探すには、専門家でもむずかしく、人類学、生理学、解剖学などの知識も必要です。人体の構造、あるいはその働きについて知っておかなくてはなりません。ですから、歯列模型や患者さんのレントゲン写真、歯があった頃の顔写真があると、ご自身に合う入れ歯をスムーズに作ることができるのです。