高齢者のすり減った歯は虫歯になりやすい

きれいに見える口の中でも、口腔内の細菌は約300種、歯垢1ミリグラムあたり1億個以上も生息しています。食べかす(食渣)などをそのままにしておくと、さらに菌は増殖します。高齢者の場合は抵抗力が低下しているので、さらに細菌が増殖し、蓄積しやすくなります。口の中の汚れは、唾液の浄化作用によってある程度きれいにはなりますが、唾液というのは舌を動かす、物を噛む、ほおを動かす、話すなどの口の機能を動かすことで唾液腺が刺激され分泌されます。しかし、高齢者になるにしたがって唾液の量は減少。その上、口の動きも低下するために、唾液の分泌が促されず、口の中が汚れやすくなります。口の中の汚れをそのまま放っておくと、汚れの「壁」で口が覆われるような状態になり、そうなると、本来しなやかに動くはずの舌はうまく動かせず、ほおの内側も汚れの壁が厚くなって感覚が鈍くなります。味を感じる下の味蕾(味を感知する器官)も汚れの中に埋もれてしまうので、食事もおいしく食べられません。そして虫歯へとなっていくのです。

虫歯は、歯垢の中の細菌が酸を作り、その酸が歯の表面を溶かして歯髄(いわゆる神経と呼ばれるところ、神経と血管がある)へと進行していく病気です。原因となる主な細菌はストレプトコッカス・ミュータンス菌で、食べかすなどの糖を餌にして、酸を作り歯を溶かしていきます。歯の表面はかたいエナメル質が覆っていて、虫歯の浸食をある程度防いでいます。しかし、エナメル質を突破すると、虫歯は一気に進行していきます。高齢者はエナメル質がすり減っていたり、歯肉が退縮してエナメル質に覆われていない根元の部分が露出していることが珍しくありません。虫歯はそこをねらってじわじわと侵食していきます。また、高齢者でよくみられるのは、虫歯によって歯の歯冠部(歯の上の部分)がなくなってしまい、歯肉のなかに根っこだけ残っている状態です。なかには全ての歯が根っこだけになっていたり、歯が折れてしまったり、歯の根元が虫歯で侵食せれていて、何かの衝撃で折れてしまったということも少なくありません。歯は一本でも失うと、隣り合った歯が倒れてきたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせに支障が生じますので、できるだけ早く治療をすることが大切です。